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大阪高等裁判所 昭和24年(を)2981号 判決 1949年12月19日

被告人

大黑順兒

主文

原判決を破棄する。

本件を京都地方裁判所に差し戻す。

理由

本件控訴の理由は末尾添付の被告人提出の控訴趣意書の通りである。

橫領罪は自己の占有する他人の物を不正に領得するにより成立するものであるから、いやしくも橫領罪ありとなすには犯人が自己の占有する他人の物を自己の物として不正に領得せんとする意思を有し且その意思が外部行爲として発現されたことを判示しなければならない。ところが原判決は「自轉車一台を勝手に自己のため着服して橫領した」と判示自轉車の「着服」とは如何なる外部行爲を言うのか原判決の事実理由だけでは不明というの外はない。判決の事実と証拠とを対照して考察すると「着服」とは被告人が森田豊に該自轉車の売捌方若しくは質入方を依賴したと言う外部行爲を指すもののようであるけれども、当裁判所が森田豊を証人として取調べた結果によると同人が被告人から自轉車処分の依賴を受けたのか、それとも被告人が森田豊作方に施錠して預けた自轉車を長男豊が勝手に持ち出したのか、この点についての森田豊の証言は頗るあいまいであつて、原判決が証拠として引用した同人の警察における供述調書の内容についても一部その供述を否認するような状態であるから、この点について更に深く審理を進めないことには何れとも判断を下せないのである。結局、原判決には理由不備と事実誤認の疑があつて、これらの欠点は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから原判決は破棄を免れない。

よつて、刑事訴訟法第三百九十七條第四百條に従い主文の通り判決する。

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